国内組織における相次ぐ情報窃取を踏まえた
注意喚起と企業・組織に求められる管理策
― 日本の政府・関係機関の公表資料の整理(2026年10月)―
1.概要
日本国内の企業・組織において、不正アクセスによる個人情報や業務情報の窃取が相次いでいます。これを受け、日本の政府・関係機関は、システムの点検、認証・アクセス制御の強化、不要なデータの削除、委託先を含む管理の徹底などを求める注意喚起を公表しています。
点検の対象は、顧客向けのWebサイトやサービスに限りません。BIツールや従業員向け管理システム、利用する外部サービスなど、個人情報や業務情報を取り扱うシステムを広く確認する必要があります。
国内の企業・組織が対応を検討する際には、内閣官房国家サイバー統括室(NCO)とJPCERT/CCの2つの注意喚起を併せて参照することを推奨します。
| 推奨する参照資料 | 主な確認内容 | 直リンク |
|---|---|---|
| NCO:不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえた対応について | Webシステム等の管理、サプライチェーンを通じた侵害への対策、データ管理など、組織として取り組む対策の全体像 | https://www.cyber.go.jp/pdf/press/taiou.pdf |
| JPCERT/CC:直近で相次いでいる国内組織における不正アクセスに関する注意喚起 | 確認されている攻撃手法・痕跡、APIへのアクセス制御、権限・トークン管理など、具体的な点検・対策 | https://www.jpcert.or.jp/at/2026/at260030.html |
NCOの資料で組織として取り組む対策の全体像を確認し、JPCERT/CCの資料で技術的な点検・対応を具体化することで、自社のシステム、保有情報、委託関係に応じた対応を検討できます。
以下では、各機関の注意喚起を比較したうえで、NCOが示す3分野を軸に管理策を整理します。なお、各機関の資料名は、「漏えい」等の表記を含め、公表時の名称を記載しています。
2.組織別の注意喚起比較表
| No. | 組織 | 公表日・更新日 | 注意喚起・資料名 | 主な要求・推奨事項 | 直リンク |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 個人情報保護委員会 | 10月7日/WARNINGは同日改訂 | 大規模な漏えい等事案を踏まえた対応について/WARNING~不正アクセスによる個人データ漏えい防止のための注意喚起~ | 技術的安全管理措置の改善、不要な個人データの消去、グループ会社・委託先の監督、APIの設計・設定の見直し | https://www.ppc.go.jp/files/pdf/261007_alert_dataleakage.pdf https://www.ppc.go.jp/files/pdf/261007_warning.pdf |
| 2 | 警察庁 | 10月8日 | サイバー警察局便り 2026 Vol.19「情報流出に注意!」 | ソフトウェア更新・パスワード強化等の基本対策、偽メールへの警戒、本人確認の徹底 | https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/pdf/R8_Vol.19cpal.pdf |
| 3 | JPCERT/CC | 10月8日/10月9日更新 | 直近で相次いでいる国内組織における不正アクセスに関する注意喚起 | 攻撃手法・痕跡に基づく点検、APIのアクセス制御・実行制限・権限管理、検知・初動・横展開対策の見直し | https://www.jpcert.or.jp/at/2026/at260030.html |
| 4 | 内閣官房国家サイバー統括室(NCO) | 10月9日 | 不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえた対応について | Webシステム等の管理、サプライチェーンを通じた侵害への対策、データ管理、経営層の関与、技術情報の共有 | https://www.cyber.go.jp/pdf/press/taiou.pdf |
| 5 | 総務省 | 10月9日 | 不正アクセスによる情報漏えい等の事案を踏まえた対応について(注意喚起) | NCOと同内容の注意喚起を所管事業者等に周知。経営層主導による対策強化を要請 | 総務省|不正アクセスによる情報漏えい等の事案を踏まえた対応について(注意喚起) |
| 6 | 経済産業省 | 10月9日 | 不正アクセスによる情報漏えい等の事案を踏まえた注意喚起及び情報提供に係る協力依頼 | 経営トップの主導、脆弱性情報の早期把握・対応、ゼロトラストへの移行、サプライチェーン全体の管理、被害情報の提供 | https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/pdf/20261009_chuuikanki.pdf |
| 7 | 情報処理推進機構(IPA) | 10月9日 | 不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえ、速やかに実施すべき対策等について | 外部公開アプリ・外部サービスの洗い出し、ログ・アカウント点検、保有データの再点検、認証・権限・API・ログ管理の見直し | 不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえ、速やかに実施すべき対策等について | 情報セキュリティ | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 |
| 8 | 金融庁 | 10月9日 | 現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化と各種取引申込等における対応について(注意喚起) | サードパーティリスク・インシデント対応態勢を含む対策点検、本人確認の徹底、ICチップ読取方式への早期対応 | https://www.fsa.go.jp/news/r8/sonota/20261009/20261009.html |
各資料の要求・推奨事項を要約しています。日付はすべて2026年です。
3.管理策
NCOが示す3分野を軸に、各機関が示す管理策を整理しました。APIに関する具体的な対策等は、JPCERT/CCなどの資料を踏まえて追加しています。
○:対象文書に直接記載あり(要求・推奨・対策例を含む)/―:直接の記載なし
他機関の資料を参照するよう求めた場合、その参照先の項目を自動的に「○」にはしていません。「―」は、当該対策が不要であることを意味しません。
| No. | 分野 | 管理策 | NCO | JPCERT/CC | 個人情報保護委員会 | 警察庁 | 総務省 | 経済産業省 | IPA | 金融庁 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | Webシステム等の適切な管理 | 脆弱性情報を把握し、修正プログラム等を速やかに適用する | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ― |
| 2 | 不要なシステム・機能を停止し、外部公開範囲を見直す | ○ | ○ | ○ | ― | ― | ― | ○ | ― | |
| 3 | 多要素認証・パスワード等により認証を強化する | ○ | ― | ○ | ○ | ○ | ― | ○ | ― | |
| 4 | アクセス権限を必要最小限にし、付与状況を見直す | ○ | ○ | ○ | ― | ― | ― | ○ | ― | |
| 5 | ログ等を点検し、不審な通信・アクセスの痕跡を調べる | ○ | ○ | ○ | ― | ― | ― | ○ | ― | |
| 6 | 不正アクセスの監視・早期検知の仕組みや体制を整備・点検する | ○ | ○ | ○ | ― | ― | ― | ― | ― | |
| 7 | サプライチェーンを通じた侵害への対策 | 委託先等を含めた対策状況を把握し、管理・監督する | ○ | ― | ○ | ― | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 8 | 委託契約でセキュリティ要件・役割分担を明確にする | ○ | ― | ○ | ― | ― | ― | ― | ― | |
| 9 | 委託先に提供する情報を必要最小限にする | ○ | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
| 10 | データの適切な管理 | 保有情報の必要性・保存期間を確認し、不要なデータを消去する | ○ | ○ | ○ | ― | ― | ― | ○ | ― |
| 11 | 保存データを暗号化する | ○ | ― | ― | ― | ― | ― | ○ | ― | |
| 12 | 通信の経路・内容を暗号化する | ○ | ― | ○ | ― | ― | ― | ― | ― | |
| 13 | データへのアクセスログを取得し、一定期間保管する | ○ | ― | ○ | ― | ― | ― | ○ | ― | |
| 14 | 漏えいした情報の悪用・二次被害を防止する | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ― | ― | ○ | |
| 15 | 横断事項 | 経営課題として位置づけ、経営層主導で対策を進める | ○ | ― | ○ | ― | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 16 | インシデント対応態勢を整備し、初動・被害拡大防止に備える | ○ | ○ | ○ | ― | ― | ― | ○ | ○ | |
| 17 | 被害状況・攻撃手法等を関係機関に提供・共有する | ○ | ○ | ― | ― | ― | ○ | ― | ― | |
| 18 | 追加事項:API | APIの設計・設定・アクセス制御・権限を点検する | ― | ○ | ○ | ― | ― | ― | ○ | ― |
| 19 | API等へのアクセスにレート制限・利用回数制限を設定する | ― | ○ | ○ | ― | ― | ― | ― | ― | |
| 20 | APIトークンの有効期限と、不要・漏えい時の無効化を管理する | ― | ○ | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
| 21 | 追加事項:外部サービス | 利用する外部サービスを洗い出し、ログ・アカウントの異常を点検する | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ○ | ― |
| 22 | 追加事項:本人確認 | 本人確認を徹底し、なりすましを防止する | ― | ― | ― | ○ | ― | ― | ― | ○ |
| 23 | 本人確認のICチップ読取方式への対応を前倒しする | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ○ |
管理策は、各機関の注意喚起と参考記事の横断整理に基づく要約です。
各社では、自社のシステム・保有情報・委託関係に照らして点検対象と担当者を定め、対応状況を確認してください。攻撃手法や痕跡に関する情報は更新される可能性があるため、参照先の最新情報も継続して確認することが必要です。
※表中の管理策は、一律の法的義務を示すものではありません。各資料の対象、要求事項と対策例の区別を確認したうえで、自社のリスクに応じて適用してください。
4.情報漏えいと情報窃取
「情報漏えい」と「情報窃取」は、同じ事案を異なる観点から表す言葉です。情報漏えいは情報が外部に流出した結果・状態に、情報窃取は攻撃者等が情報を不正に取得する行為に着目しています。
個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」では、個人データの「漏えい」を「個人データが外部に流出すること」と定義しています。また、ランサムウェアによる暗号化と同時に個人データが窃取された場合には、個人データの漏えいにも該当すると明記しています。
| 用語 | 本稿での使い分け | 事象の例 |
|---|---|---|
| 情報漏えい | 情報が外部に流出した結果・状態を表す | メールの誤送信、設定ミスによる情報公開、不正アクセスによる情報窃取 |
| 情報窃取 | 攻撃者等が情報を不正に取得する行為を表す | 不正アクセスやマルウェア、内部不正等による情報の取得・持ち出し |
初版:2026年10月9日
執筆:株式会社ENNA 代表取締役
編集・構成協力:ChatGPT
掲載:株式会社ENNA コラム
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