規程整備にアシスタントコンサルタントがやってきた

当社では、2009年から企業の規程整備に関するコンサルティングを行ってきました。規程の新規策定や改定だけではなく、既存の規程を確認し、文書間の関係を整理し、会社全体の規程体系を整える仕事です。

この仕事を始めた頃から、一緒に規程整備のコンサルティングをしてくれる人を探してきました。しかし、思うようには増えませんでした。

それから十数年が経ち、生成AIが登場しました。実際に規程整備の仕事で使ってみると、これまで人間が時間をかけていた作業の多くを手伝ってくれます。ようやく、規程整備にアシスタントコンサルタントがやってきた。そんな感覚を持ちました。

しかし、一緒に仕事を続けてみると、生成AIが得意なことと、そうではないことも見えてきました。そして、それを考えていくと、最近話題となっている「生成AIによって仕事や雇用が減るのか」という問題にも、少しつながっているように思います。

1. 2009年から、一緒に規程を作る人を探してきました

当社が規程整備の仕事を始めたのは2009年です。それ以来、様々な企業の規程を読み、作り、直し、規程文書間の関係を整理してきました。

この仕事を始めた当初から考えていたのが、一緒に規程整備のコンサルティングをしてくれる人を増やすことです。一人でできる仕事には限界がありますし、規程整備という仕事そのものを広げていくためにも、同じような仕事ができる人が必要でした。

ところが、これがなかなか難しいものでした。

文章を書くことが得意な人はいます。法律に詳しい人もいます。人事、経理、法務、情報セキュリティなど、特定の業務に詳しい人もいます。しかし、規程整備の仕事は、そのどれか一つだけでは完結しません。

ある会社の規程を整備するためには、まず、その会社がどのような仕事をしているのかを理解する必要があります。その上で、誰がその仕事を担当し、誰が判断し、誰が責任を負っているのかを見ていきます。関係する法律や制度を確認し、それを会社のルールに落とし込み、さらに他の規程との関係まで考えます。

規程を書くというよりも、会社の仕事を理解し、それをルールとして整理して文章にしていく仕事に近いのです。

振り返ってみると、この仕事を一緒にできる人がなかなか増えなかったことには、それなりの理由があったのだと思います。

2. 規程整備は、何の専門家なのでしょうか

規程整備を始めた頃、それぞれの分野の専門家にも相談しました。

契約に関することであれば、弁護士に相談できます。個人情報の取扱いについても、法律上の問題であれば弁護士に相談できます。経理や財務については、公認会計士や税理士がいます。就業規則や労務管理については、社会保険労務士という専門家がいます。

それぞれの専門分野には、相談できる相手がいます。

ところが、会社にある規程は、それだけではありません。

営業活動をどのように管理するのか、見積りを誰が確認し、どの段階で受注を決定するのか、受注した仕事をどのように次の部門へ引き渡すのか。製造工程では誰が何を確認し、どの段階で承認するのか。日常的な申請、承認、報告をどのようなルールにするのか。こうした会社の日常業務を規程にしようとすると、途端に誰に相談すればよいのか分からなくなります。

しかも、実際の業務は専門分野ごとに分かれているわけではありません。営業が契約を締結すれば法務が関係し、その後の請求では経理が関係します。取引先の情報を扱えば、個人情報保護や情報セキュリティも関係します。そこで働く社員のルールとなれば、人事や労務にもつながります。

会社の仕事は、いくつもの専門分野をまたいで流れています。それぞれの専門分野について相談する相手はいても、「では、この会社では全体として、どのようなルールにすればよいのでしょうか」という問いを相談できる相手は、なかなか見つかりませんでした。

規程整備は、既存の専門分野と専門分野の間をつないでいく仕事でもあるのだと思います。

3. 規程を書くためには、会社を見なければなりません

長く規程整備をしていると、この仕事には意外に多くのことが求められることが分かります。

まず、規程文書という独特の文書に慣れる必要があります。規程、規則、細則、要領、マニュアルなどをどのように使い分け、それぞれをどのような関係にするのか。個々の文章だけではなく、規程体系として見る必要があります。

扱う分野も幅広く、人事、総務、法務、経理、コンプライアンス、リスクマネジメント、情報管理、情報セキュリティなど、規程によって関係する法律や制度は異なります。それぞれについて必要なことを調べなければなりません。

しかし、法律や制度を知っているだけでは規程は作れません。規程は、会社の中で人が仕事をするためのルールだからです。

誰が仕事を始め、誰が確認し、誰が承認するのか。どこまで行えば、その作業は完了したことになるのか。例外が発生したときには、誰が判断するのか。実際の業務プロセスを理解しながら、ルールを考える必要があります。

また、会社の組織にも関心を持たなければなりません。組織図に書かれている形式的な関係だけではなく、実際には誰が判断し、誰が責任を負い、どの部門とどの部門を調整しなければ仕事が進まないのかという、組織の力学も規程の運用に影響します。

さらに、自分が書いた文章を他人がどのように読むのかを想像することも重要です。作った本人には明確な文章でも、初めて読む社員には別の意味に読めるかもしれません。必要なことをすべて書けばよいわけでもなく、社員が読んで理解でき、実際に運用できる文書にする必要があります。一方で、監査法人や監査役など第三者から確認されたときには、そのルールを合理的に説明できなければなりません。

そして、規程は一度作れば終わりではありません。法律が変わり、社会が変わり、技術が変わります。会社自身も、組織変更、新しい事業、新しいシステムの導入などによって変化します。その変化を会社から拾い、どの規程に影響するのかを考え、必要な見直しを続けていくことも規程整備の仕事です。

だからこそ、どこかから雛型を持ってきて、会社名を書き換えれば完成するというものではありません。規程を書くためには、規程を見るだけではなく、その会社を見る必要があります。

4. そこに、アシスタントコンサルタントがやってきました

そんな仕事を続けているところに、生成AIが登場しました。

最初は、他の業務と同じように規程整備でも使えるのではないかという程度でした。しかし、実際に使ってみると、規程文書との相性はかなりよいことが分かりました。

一つの規程について雛型を作ってもらうことができますし、必要と思われる条項の候補を挙げてもらうこともできます。既存の文章を読みやすく直したり、曖昧な表現を探したり、不足していそうな事項を挙げてもらったりすることもできます。既存の規程と雛型を比較して不足を探すことや、二つの規程を比較して似たルールが書かれているところを探すことにも役立ちます。

これまで人間が一つひとつ読み、探し、比較していた作業を、かなり短い時間で行ってくれます。大量の文章を読むことも嫌がりませんし、同じような確認を繰り返し頼んでも疲れません。こちらが気になったことがあれば、さらに条件を加えて、何度でも調べ直してもらえます。

2009年から、一緒に規程整備をしてくれる人を探してきました。それから十数年が経って、ようやくアシスタントコンサルタントが一人やってきたような感覚でした。

規程整備という仕事では、とても頼もしい存在です。

ところが、一緒に仕事をする時間が増えてくると、このアシスタントにも得意な仕事と、任せてはいけない仕事があることが分かってきました。

5. 規程を「書く」ことと、ルールを「作る」ことは違います

一つの規程文書を修正する仕事であれば、生成AIはとても役に立ちます。雛型となる文書を作り、そこから使えそうな文例を持ってきて、既存の規程に合わせて文章を修正していく。このような作業は、生成AIが得意とするところです。

しかし、それで規程が完成するわけではありません。生成AIが作った文章を、その会社の実際の業務とすり合わせていく仕事が残っています。

規程を作る際には、必要な事項を網羅するだけではなく、どれくらいの文書量であれば社員に読んでもらえるのかを考えます。必要なことをすべて盛り込んだ結果、誰も読まない文書になってしまっては、会社のルールとして十分に機能しません。一方で、読みやすさを優先して簡単にしすぎれば、必要なルールが伝わらなくなります。

同じことは、ルールの細かさにもいえます。厳密に管理しようとして、あらゆる場面について細かな手続を定めれば、規程としては立派に見えるかもしれません。しかし、実際の業務で守ることができなければ意味がありません。何らかの基準を設ける場合にも、理想的な水準を示すだけではなく、その会社が実際に達成し、継続できる水準なのかを考える必要があります。

さらに、誰に責任を持たせ、誰に承認させるのか、どのような記録を残すのか、例外が生じたときには誰が判断するのかといったことも、その会社の組織や業務に合わせて決めていかなければなりません。

生成AIは、一般的にはどのようなルールが考えられるのかを示してくれます。雛型や文例も作ってくれます。しかし、それがその会社にとって適切なのかまでは決めてくれません。

規程の文章を「書く」ことと、その会社のルールを「作る」ことには、大きな違いがあります。

6. 複数の規程を任せると、ルールが揺れます

さらに、生成AIを使い続ける中で、もう一つ気になることが分かってきました。複数の規程文書を扱う場合です。

生成AIは、近似した業務や類似した業務を見つけることには強みがあります。複数の規程を比較して、同じようなルールが別の規程にも存在することを見つけたり、似た業務について異なる表現が使われていることを指摘したりする仕事には、とても役立ちます。

ところが、その先まで任せて、「これらの規程を整合させてください」とすると、別の問題が生じます。規程文書が少しずつ揺れ始めるのです。

生成AIが回答するときの背景にあるのは、必ずしもその会社が長年積み重ねてきたルールではありません。一般的な知識や、様々な規程の雛型、文例などを背景として、もっともらしい答えを作ります。その結果、一つの規程を修正したときにはAという考え方を採用し、別の規程ではBという考え方を採用することがあります。

それぞれの規程を単体で読めば、どちらもおかしくありません。むしろ、よくできた文章に見えることもあります。しかし、会社全体の規程として並べてみると、承認する人が違っていたり、責任主体が変わっていたり、同じ意味で使うはずの言葉が違っていたりします。求める管理水準や、例外を認める条件まで少しずつ変わることもあります。

文章の表現だけを見れば、こうした違いは小さなものに見えるかもしれません。しかし、規程は会社のルールです。ある文書では部門長が判断し、別の文書では同じような事項を担当役員が判断することになっていれば、実際の業務ではどちらに従えばよいのか分からなくなります。

この「揺れ」は、文章作成の問題ではなく、ルール形成の問題です。

生成AIには、規程同士の違いを探してもらうことができます。関連する記述を集め、比較し、問題になりそうなところを示してもらうこともできます。しかし、その違いをどちらに統一し、会社として何をルールにするのかは、人間が決めなければなりません。

一つひとつの規程をもっともらしくすることと、会社全体のルールを一貫させることは、同じではないのです。

7. AIで仕事がなくなるという話を、少し違って見る

こうして生成AIと規程整備を続けていると、最近よく話題になる「生成AIによって仕事や雇用が減るのか」という問題についても、規程整備という仕事から見えてくるものがあります。

確かに、生成AIによって人間が行う作業は減っています。これまで時間をかけていた文章の作成や修正、文例の調査、複数の文書の比較、大量の文章から関連する記述を探すといった作業は、生成AIを使うことで大幅に効率化できます。その部分だけを見れば、同じ仕事をするために必要な人手は少なくなると考えることもできます。

一方で、生成AIが作った文章を会社の業務とすり合わせる仕事は残ります。そのルールを社員が理解して守れるのか、設定した基準を実際に達成できるのかを考えなければなりません。複数の案が示されたときには、その会社に適したものを選ぶ必要がありますし、規程同士に違いがあれば、会社としてどちらを採用するのかを決めなければなりません。

こうして考えると、生成AIによって減っていくのは、職業そのものというよりも、その職業の中に含まれていた個々の作業なのかもしれません。そして、これまで人間が担当していた作業の一部を生成AIが引き受けるようになることで、人間が担当する仕事の位置も変わっていきます。

これまでは、情報を探し、文章を作り、比較するところから人間が仕事を始めていました。これからは、生成AIが集めた情報や作った文章を前にして、それが正しいのか、その会社に適しているのか、どの案を採用するのかを考えるところから、人間の仕事が始まる場面が増えていくのでしょう。

生成AIによって人間の仕事が単純に簡単になるというよりも、作業をすることから、考え、選び、判断することへと、人間が担う仕事の重心が移っているように感じます。

8. それでも、人を育てなければなりません

そう考えていくと、2009年から抱えてきた私たち自身の課題に戻ってきます。

生成AIというアシスタントがいれば、規程整備のコンサルタントを増やさなくてもよくなるのではないか。文章を作ることも、調べることも、比較することも手伝ってくれるのであれば、人間を育てる必要性も小さくなるのではないか。生成AIを使い始めた頃には、そのような可能性も考えました。

しかし、実際に使い続けてみると、むしろ逆ではないかと思うようになりました。

生成AIが簡単に文章を作れるようになれば、その文章がその会社の規程として適切なのかを判断できる人が必要になります。複数の案を短時間で示してくれるようになれば、どの案を採用するのかを決める人が必要になります。複数の規程の違いや矛盾を見つけてくれるようになれば、それをどのように整理し、会社として一つのルールにしていくのかを考える人が必要になります。

そして、その判断は規程文書だけを読んでいてもできません。会社がどのような事業を行い、どのような組織で仕事をしているのかを理解する必要があります。現場ではどのような業務が行われ、どこに無理があり、どこにリスクがあるのかも知らなければなりません。法律や制度の変化だけでなく、技術や社会の変化が会社の業務にどのような影響を与えるのかにも関心を持ち続ける必要があります。

生成AIは、こうした判断に必要な材料を集める優秀なアシスタントにはなれます。しかし、その材料を使って会社のルールを考えるコンサルタントそのものには、まだなっていません。

結局、規程整備のコンサルティングを続けていくためには、やはり人間を育てていく必要があります。

ただし、2009年とは仕事の環境が大きく変わりました。今は、生成AIというアシスタントコンサルタントがいます。調べること、比較すること、文章を作ることを一緒に進められるのであれば、人間はその分だけ、会社を見ること、業務を理解すること、そして考えて判断することに時間を使えるようになります。

生成AIの登場によって、人を育てる必要がなくなったのではありません。むしろ、どのような人を育てる必要があるのかが、以前よりはっきりしてきたように思います。

9. 規程整備のコンサルタントになりたい人はいませんか?

2009年から、一緒に規程整備のコンサルティングをしてくれる人を探してきました。それから十数年が経ち、生成AIというアシスタントコンサルタントがやってきました。

それでも結局、同じところに戻ってきました。

私たちは今も、規程整備のコンサルティングを一緒にやってくれる人を増やしたいと考えています。ただ、2009年当時と違うのは、これから規程整備を学ぶ人には、生成AIという強力なアシスタントがいることです。

すべての雛型を覚えている必要はありません。分からないことをすべて一人で調べる必要もありません。大量の規程を最初から最後まで一人で比較し続ける必要もありません。生成AIに調べてもらい、比較してもらい、文章の案を作ってもらいながら、人間はその結果を確認し、実際の会社に当てはめて考えることができます。

そのときに重要になるのは、生成AIを操作する技術だけではありません。会社の中で誰がどのような仕事をしているのかに興味を持ち、なぜその業務がそのような流れになっているのかを考え、どこにリスクがあり、どこにルールが必要なのかを見つける力です。そして、作ったルールを現場が本当に運用できるのかまで考えることです。

そう考えると、これまで総務や法務として会社の中で様々な仕事を経験してきた方には、規程整備のコンサルティングに活かせるものがたくさんあると思います。総務であれば、会社の様々な部門と関わりながら、組織が実際にどのように動いているのかを見てきた経験があります。法務であれば、法律と会社の事業や業務をすり合わせながら、ルールを考えてきた経験があります。

規程整備のコンサルティングでは、法律だけを見るのではなく、会社を見ます。文章だけを書くのではなく、その文章の向こうにある業務を見ます。雛型に会社を合わせるのではなく、その会社に必要なルールを考えます。

そして、これからは生成AIというアシスタントと一緒に、それを考えることができます。

2009年から探し続けてきましたが、改めてもう一度、問いかけてみたいと思います。

規程整備のコンサルタントになりたい、総務・法務経験者はいませんか?

初版:2026年8月15日
執筆:株式会社ENNA 代表取締役
編集・構成協力:ChatGPT
掲載:株式会社ENNA コラム

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