一般社団法人の理事として
知っておきたいこと
はじめに
一般社団法人の理事には、さまざまな立場や経歴を持つ方が就任します。
所属する企業や団体から推薦されて就任する場合もあれば、これまでの経験や専門的な知識を生かすことを期待されて就任する場合もあります。
理事として活動するために、一般社団法人に関する法律や制度をすべて詳しく理解しておく必要はありません。一方で、一般社団法人という組織の特徴や、理事という立場について、あらかじめ知っておいた方がよいことがあります。
この資料では、一般社団法人の理事として活動する際に知っておきたい基本的な仕組みや、判断するときに参考となる考え方をまとめています。
法律や規則を詳しく解説するためのものではありません。
理事として活動する中で、「これはどう考えればよいのだろう」と迷ったときに、確認するための入り口として活用してください。
1.はじめに知っておきたい「一般社団法人」という仕組み
一般社団法人は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立・運営される法人です。
株式会社とは異なる仕組みを持っていますが、法人として契約を締結し、人を雇用し、事業を行い、収入を得ることもできます。
また、「一般社団法人だから公益活動だけを行う」「非営利だから利益を上げてはいけない」というものでもありません。
一般社団法人は、その目的に応じてさまざまな事業を行うことができます。事業によって収入を得たり、結果として利益が生じたりすることもあります。
一方で、株式会社のように、事業によって生じた剰余金を社員に分配することを目的とした法人ではありません。
理事として活動するにあたって、法律の細かな条文をすべて覚えておく必要はありませんが、
- この法人は何を目的としているのか
- どのような事業を行っているのか
- どのような人や組織によって構成されているのか
- 誰が、どのように意思決定するのか
- 理事にはどのような役割があるのか
といった基本的な仕組みを知っておくことをお勧めします。
2.一般社団法人でよく使われる言葉
一般社団法人では、普段使っている言葉と法律上の意味が異なることがあります。
特に「社員」という言葉は、最初に戸惑いやすい言葉です。
| 用語 | 知っておきたい意味 |
|---|---|
| 一般社団法人 | 一般法人法に基づいて設立される法人です。人の集まりを基礎として法人格を持つ仕組みです。 |
| 定款 | 法人の目的、事業、社員、役員、社員総会など、法人運営の基本となる事項を定めたものです。法人運営の最も基本となるルールです。 |
| 社員 | 一般社団法人を構成する法律上のメンバーです。会社の「従業員」という意味ではありません。社員総会で議決権を行使するなど、法人の意思決定に重要な役割を持ちます。 |
| 会員 | 法人が独自に設ける会員制度上の呼称です。「正会員」「賛助会員」「法人会員」などがあります。会員と法律上の社員が同じとは限りません。 |
| 社員総会 | 社員によって構成される意思決定機関です。理事・監事の選任など、法律や定款で定められた重要事項を決定します。 |
| 役員 | 一般社団法人における理事及び監事をいいます。それぞれ異なる役割と責任を持ちます。 |
| 理事 | 法人の運営を担う役員です。理事会設置法人では理事会の構成員となり、法人の業務執行に関する意思決定や、他の理事の職務執行の監督などに関わります。 |
| 代表理事 | 一般社団法人を代表する理事です。法人を対外的に代表して行為する権限を持つとともに、法人の業務を執行します。 |
| 業務執行理事 | 理事会設置法人において、代表理事以外で、理事会によって法人の業務を執行する理事として選定された理事です。すべての理事が業務執行理事になるわけではありません。 |
| 理事会 | 理事会設置法人に置かれる機関です。すべての理事によって構成され、業務執行に関する重要事項の決定、理事の職務執行の監督、代表理事の選定・解職などを行います。 |
| 監事 | 理事の職務執行などを監査する役員です。理事とは異なる立場から法人の運営を確認します。 |
| 事務局 | 法人の日常的な事務や事業運営を担う組織や担当者です。法律上の機関ではなく、実務を広く担っていても、理事や理事会の役割そのものを代わって担うものではありません。 |
| 会員規則 | 会員制度を設けている場合に、会員の種類、入退会、会費、権利・義務などの具体的な運用を定める内部ルールです。 |
| 規程 | 法人の組織や業務の運営方法について定める内部ルールです。理事会規程、会計規程、職務権限規程など、法人の必要に応じて設けられます。 |
| 法令 | 法律、政令、省令など、法人が活動するうえで守らなければならない公的なルールです。一般社団法人については、一般法人法が基本となります。 |
| 職務執行 | 理事などが、その役職に基づいて行う判断、意思決定、監督その他の職務を行うことです。理事会への出席や議決への参加なども、理事としての重要な職務です。 |
| 業務執行 | 法人の事業や日常の業務について、具体的な判断を行い、実際に進めることです。理事会設置法人では、代表理事及び業務執行理事が業務を執行します。 |
| 監督 | 理事会が、代表理事や業務執行理事などによる職務の執行が適切に行われているかを確認することです。理事会を構成する理事の重要な役割の一つです。 |
| 決議 | 社員総会や理事会において、議案について意思決定することです。決議には法律や定款に定められた成立要件があります。 |
| 議決権 | 社員総会などにおいて、議案に賛成又は反対の意思を示し、意思決定に参加する権利です。理事会では、理事が決議に参加します。 |
| 善管注意義務 | その立場や職務に応じて、通常期待される程度の注意をもって職務を行う義務です。理事には、法人から職務を任された者として適切な注意をもって判断し、行動することが求められます。 |
| 忠実義務 | 理事が法令、定款、社員総会の決議を守り、法人のために忠実に職務を行う義務です。自らや所属企業だけの利益ではなく、法人の立場を踏まえて職務を行うことが求められます。 |
| 利益相反 | 法人の利益と、理事本人やその所属企業・関係者などの利益が対立する、又は対立する可能性がある状態です。利益相反があること自体だけで問題となるのではなく、その状況を適切に把握し、必要な手続を行うことが重要です。 |
| 特別利害関係 | 理事会の決議事項について、法人とは別に、特定の理事が特別な利害関係を持つ状態をいいます。特別の利害関係を有する理事は、その決議に加わることができません。 |
| 内部統制 | 法人の業務を適正に行うために設ける、組織、役割分担、承認、報告、確認、ルールなどの仕組みです。法人の規模や活動内容に応じて整備します。 |
| 任期 | 理事や監事として職務を行う期間です。法律及び定款の定めに従います。 |
| 選任 | 社員総会の決議など、法律で定められた手続によって理事や監事を選ぶことです。 |
| 解任 | 任期の途中で理事や監事としての地位を終了させることです。法律で定められた手続によって行われます。 |
| 議事録 | 社員総会や理事会で、どのような事項について報告・審議・決議が行われたかを記録した書類です。単なる会議メモではなく、法人の意思決定を記録する重要な文書です。 |
| 事業計画 | 法人が一定期間にどのような活動を行うかについてまとめた計画です。理事が法人全体の活動を考える際の基本的な資料となります。 |
| 予算 | 一定期間に予定する収入や支出などをあらかじめ計画したものです。事業計画とあわせて、法人がどのような活動に資金を使うのかを示します。 |
| 決算 | 一定期間の法人の収入、支出、財産などを整理し、計算書類等を作成する一連の手続を一般にいいます。 |
| 事業報告 | 事業年度に法人が行った活動や法人の状況などについてまとめた書類です。 |
| 計算書類 | 法人の財産や収支などの状況を示すために作成される書類です。貸借対照表や損益計算書などが含まれます。 |
| 役員の責任 | 理事や監事は、法人から役割を任された役員として職務を適切に行う責任を負います。職務を怠り法人に損害を与えた場合などには、法律上の責任が生じることがあります。 |
「社員」と「会員」に注意しましょう
一般社団法人について最初に戸惑いやすいのが「社員」という言葉です。
一般法人法でいう社員は、法人の従業員ではありません。
また、法人によっては「正会員」「一般会員」「賛助会員」など、さまざまな会員区分を設けています。そのうち誰が法律上の「社員」になるのかは、それぞれの法人の定款によって異なります。
まずは、自分が理事を務める法人の定款や会員規則を確認してみましょう。
3.まず、定款と会員規則に目を通しておきましょう
理事に就任したら、まず法人の定款には一度目を通しておくことをお勧めします。
定款には、法人の目的や事業だけでなく、社員、社員総会、理事、理事会など、法人を運営するための基本的な仕組みが定められています。
また、会員制度を設けている法人では、会員規則などに、会員の種類、入会・退会、会費、会員としての権利や活動上のルールなどが定められていることがあります。
すべての条文を覚える必要はありません。
まずは、
- 法人は何を目的としているのか
- どのような事業を行うのか
- 誰が社員なのか
- どのような会員がいるのか
- 誰がどのように意思決定するのか
- 理事会では何を決めるのか
といった基本的な仕組みを確認しておくだけでも、理事会で議案を検討するときの助けになります。
分からないことがあったときに、「定款や規則のどこを確認すればよいのか」を知っておくことも大切です。
4.理事として知っておきたいこと
理事として活動する際に、まず知っておきたいことを整理すると、次のようになります。
| 理事として知っておきたいこと | 基本的な考え方 | 確認しておきたいもの |
|---|---|---|
| 理事になるということ | 法人の運営を担う立場になります。理事会への出席だけが役割ではありません。 | 一般法人法、定款 |
| 法人の目的・事業 | 法人が何のために存在し、現在何を行っているのかを知っておきます。 | 定款、事業計画、事業報告 |
| 非営利ということ | 事業や収益を否定するものではありません。剰余金を社員に分配することを目的とした法人ではありません。 | 一般法人法、定款 |
| 所属企業との関係 | 所属企業から推薦された場合でも、法人の理事として考える必要がある場面があります。 | 一般法人法、定款 |
| 業界への貢献 | 自社だけではなく、業界全体を俯瞰し、この法人だからできることを考えます。 | 法人の目的、事業計画 |
| 利益相反 | 自分や所属企業と法人との利害が関係する場合には、確認や適切な手続が必要になることがあります。 | 一般法人法第84条等 |
| 理事会への参加 | 資料を確認し、分からないことを質問し、必要な場合には意見を述べます。 | 定款、理事会関係規程 |
| 法人のお金 | 会費や事業収入などを、法人の目的・事業との関係を考えて取り扱います。 | 予算、決算、会計関係規程 |
| 情報の取扱い | 理事として知った非公開情報の取扱いには注意します。 | 法令、定款、内部規程 |
| コンプライアンス | 活動目的が社会的に有意義であっても、法令・定款・規程・必要な手続を守ります。 | 法令、定款、内部規程 |
| 事務局との関係 | 実務を事務局に任せても、理事としての判断や監督まで事務局に任せるものではありません。 | 定款、職務権限等 |
| 問題への対応 | 疑問や違和感を感じた場合には、早めに確認・相談します。 | 法人内部の相談・報告体制 |
※この表は、理事の法律上の義務を網羅的に示したものではありません。理事として活動する際に、あらかじめ知っておくとよい基本的な考え方を整理したものです。
5.理事になるということ
理事は、理事会に出席するだけの立場ではなく、法人の運営を担う役員です。
実際の事務や事業運営の多くを事務局や担当者が行っている法人であっても、重要な事項について意思決定を行ったり、法人の活動状況を確認したりすることは、理事の大切な役割です。
すべての実務を詳しく知る必要はありません。
分からないことがあれば確認する、判断に必要な情報が不足していれば説明を求める、必要であれば自分の意見を述べるという姿勢が大切です。
6.法人の目的と事業活動を知っておく
一般社団法人には、それぞれ定款に定められた目的があります。
個々の事業や活動について判断するときにも、
「この法人は何のために存在しているのか」
という目的に立ち返ることで、判断しやすくなることがあります。
また、目的だけでなく、現在どのような事業や活動を行っているのかについても、一度確認しておくことをお勧めします。
事業計画や事業報告、法人のWebサイトなどを見ることで、
- 現在、何に取り組んでいるのか
- 誰に対して、どのような価値を提供しているのか
- どのような課題に取り組もうとしているのか
- 今後、どのような方向へ進もうとしているのか
が見えてきます。
新しい事業を始めるとき、お金を使うとき、他の組織と協力するときにも、法人の目的や現在の事業との関係を考えることが基本となります。
7.この場では、業界全体を俯瞰して考えてみる
企業や団体から理事として参画される方の多くは、日常、それぞれの組織において責任ある立場で事業に携わっています。
そこでは、自社・自組織の事業や社員、お客様などに対する責任を負いながら、さまざまな判断をされています。
一般社団法人の活動に参加するときには、そうした日常の立場を大切にしながらも、自社・自組織という立場からいったん離れ、業界全体を俯瞰して考えてみてください。
個々の企業には、それぞれの事情や課題があります。
しかし、もう一段大きな単位で見てみると、一社では解決することが難しい課題、業界として取り組んだ方がよい課題、将来のために今から考えておいた方がよいことがあります。
「この業界がこれからどうなっていくとよいのか」
「そのために、この法人だからできることは何か」
という観点から考えることも、こうした場だからこそできることです。
もちろん、業界全体について考えることと、自社・自組織の発展を考えることは、相反するものではありません。
業界が健全に発展することが、そこに参加する企業の成長や新しい事業機会につながることもあります。また、自社が抱えている課題や問題意識を持ち寄ることで、それが業界共通の課題として認識され、新しい取組につながることもあります。
そのため、
「この活動が自社にとってどのような意味を持つのか」
「自社にとっても良い結果につながらないか」
と考えること自体に問題があるわけではありません。
一方で、法人の立場や活動を利用して特定の企業だけに利益を誘導したり、自分や所属企業と法人との利害が関係する事項について、必要な手続を経ずに判断に関与したりすることには注意が必要です。
自社・自組織との利害関係があると感じたときには、それを隠さず、他の理事や事務局などに伝え、利益相反に当たらないか、どのような手続が必要なのかを確認することが大切です。
自社のことも考える。ほかの企業のことも考える。そして、その一段上から業界全体がどう発展していくとよいのかを考える。
それぞれの企業・団体で培ってきた経験や知見を持ち寄り、企業の枠を越えて意見を交わし、業界全体の健全な発展のために力を貸していただく。
それも、一般社団法人の理事として期待される大切な役割の一つです。
8.貢献の形は、一つではありません
理事に就任すると、
「何か貢献しなければならない」
「理事になったのだから、自分も何か新しいことを始めなければならない」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、理事としての貢献の形は一つではありません。
専門的な知識や経験を提供することもあれば、人や組織をつなぐこと、事業について助言すること、重要な場面で意見を述べることもあります。
法人によっては、その分野で長く活動してきた方や、業界から信頼されている方に理事として参画していただくこと自体が、法人の信頼や活動を支えることもあります。
普段は法人の活動を見守りながら、必要なときに助言するという関わり方もあります。
一方で、法人や業界にとって重要な局面では、それぞれの経験、専門性、人脈、立場などを生かして、ひと肌脱いでいただくことが大きな力になることもあります。
大切なのは、すべての理事が同じように活動することではありません。
| 関わり方 | 例えば |
|---|---|
| 見守る | 法人の活動を継続的に見て、重要な場面で確認や意見をする |
| 知恵を出す | 自分の経験や専門性から助言する |
| つなぐ | 必要な人、企業、団体などとの接点をつくる |
| 伝える | 法人の活動や意義を、自分の周囲や業界に伝える |
| 支える | 事業やイベントなど、必要な活動に協力する |
| ひと肌脱ぐ | 法人や業界にとって重要な局面で、自分の経験や立場を生かして力を貸す |
| そこにいる | その方が理事として参画していること自体が、法人の信頼や活動を支える |
「何かをしなければ」と考えることから始める必要はありません。
まず法人の活動を知り、自分だからできることがあるときに、少し力を貸していただく。
それも、非営利活動を支える理事としての大切な関わり方です。
9.「非営利」という意味を理解しておく
「非営利」という言葉から、「利益を上げてはいけない」「有償の事業を行ってはいけない」と思われることがあります。
しかし、一般社団法人が事業を行い、収入を得たり、結果として利益が生じたりすること自体が否定されているわけではありません。
大切なのは、株式会社とは異なり、一般社団法人は剰余金を社員に分配することを目的とした法人ではないということです。
得られた資金を法人の目的や事業、将来の活動のためにどのように生かしていくのかという視点を持つことが大切です。
10.所属する企業・団体と、法人での立場
企業や団体から推薦を受けて理事に就任することがあります。
所属企業・団体の知識や経験、人脈などを法人の活動に生かすことは、大きな価値があります。
一方、理事として判断するときには、所属企業の意向だけではなく、法人そのものにとって何が適切なのかという視点が必要になることがあります。
一般法人法では、理事は法令、定款、社員総会の決議を遵守し、一般社団法人のため忠実に職務を行うことが求められています。
判断に迷ったときには、
「いま、自分はどの立場で判断しているのだろう」
と考えてみることも、一つの方法です。
11.利益相反という考え方を知っておく
法人と、自分自身や所属企業、関係する組織との間で、取引や契約などが行われることがあります。
関係があること自体が、直ちに問題になるわけではありません。
また、先ほど触れたように、法人の活動が自社の発展にもつながることを考えること自体が問題なのでもありません。
注意したいのは、自分や所属企業などの利益と法人の利益が直接関係する場面です。
このような場合には、一般法人法や法人内部のルールに基づいて、承認などの手続が必要になることがあります。
大切なのは、利害関係があることを隠さず、適切な手続のもとで法人として判断できるようにすることです。
「これは自分や所属組織にも直接関係する話ではないか」
と感じたときには、代表理事、他の理事、監事、事務局などに伝えて確認することをお勧めします。
12.理事会では、分からないことをそのままにしない
理事会には、事業、予算、契約、人事、規程など、さまざまな事項が提出されます。
すべてについて専門家である必要はありません。
資料を読んで分からないこと、判断するための情報が不足していると思うこと、少し違和感を覚えることがあれば、質問してみましょう。
専門外だから質問してはいけないということはありません。
さまざまな経験や専門性を持った理事が異なる視点から確認することは、法人の健全な運営にもつながります。
13.法人のお金について考える
一般社団法人には、会費、事業収入、寄付金、助成金など、さまざまな形で資金が集まります。
その資金は法人の活動を支える大切な基盤です。
特に、会員や参加者、協力者などから集めた資金については、
「法人の目的や事業との関係を説明できる使い方になっているか」
という視点を持っておくとよいでしょう。
理事がすべての支出を個別に確認するという意味ではありません。
予算や決算、重要な支出などを確認する際の基本的な視点として知っておきたいことです。
14.理事だから知ることのできる情報がある
理事として活動していると、一般には公開されていない情報を知ることがあります。
法人内部の検討状況、会員や関係者の情報、契約、人事、今後の事業計画など、その内容はさまざまです。
所属企業の方との会話など、日常的な場面であっても、法人の内部情報をどこまで共有してよいのか迷うことがあります。
判断に迷う情報については、自分だけで判断せず、法人に確認してから取り扱うことをお勧めします。
15.「良い活動だから大丈夫」とは限らない
非営利法人では、社会、業界、地域、会員などのためになることを目的として活動することがあります。
しかし、活動の目的が社会的に有意義であっても、法人として活動する以上、法令、定款、法人内部の規程や決定された手続を守る必要があります。
「目的が正しいから、手続は多少省略してもよい」というものではありません。
良い目的を実現するためにも、適切な手続を踏んで活動することが、法人への信頼につながります。
16.事務局に任せることと、理事として関わること
日常的な業務の多くは、事務局、職員、外部の委託先などが担当します。
効率的に法人を運営するためには、実務を適切に任せることも必要です。
一方で、
「事務局がやっているから大丈夫」
ということだけで終わらせず、重要な事項について報告を受け、必要な確認を行うことも理事として大切です。
理事と事務局がそれぞれの役割を理解し、適切に協力することが、安定した法人運営につながります。
17.気になることがあれば、早めに共有する
法人の活動の中で、
「これは大丈夫だろうか」
「少し違和感がある」
「このまま進めてもよいのだろうか」
と感じることがあるかもしれません。
その時点では小さな疑問であっても、後になって重要な問題になることがあります。
一人で判断する必要はありません。
代表理事、他の理事、監事、事務局など、内容に応じて適切な相手に確認・相談してみましょう。
早い段階で疑問を共有することは、問題を防ぐことにもつながります。
18.こんなとき、少し立ち止まって確認してみる
日々の活動の中では、法律の条文を意識して判断するというよりも、「何か気になる」と感じるところから始まることが多いと思います。
そのようなときには、次のような視点で確認してみるとよいでしょう。
| こんな場面 | 確認してみたいこと |
|---|---|
| 所属企業に関係する議案が出てきた | 自分や所属企業との利害関係はないか。必要な手続はないか。 |
| 法人の活動が自社にとっても良い機会になりそう | 自社にもメリットがあること自体を問題視する必要はありません。ただし、特定企業への利益誘導や利益相反になっていないか確認してみましょう。 |
| よく分からない議案だけれど、他の理事が賛成している | 自分が判断するために必要な説明や資料は十分か。 |
| 事務局から「いつもこの方法です」と説明された | 定款、規則、規程、これまでの理事会決議などとの整合は取れているか。 |
| 法人から自分の所属企業へ業務を発注する | 利益相反に当たらないか。必要な承認や手続が行われているか。 |
| 会費や法人のお金を新しい活動に使う | 法人の目的や事業との関係を説明できるか。 |
| 理事会で知った話を所属企業で共有したい | 法人外へ共有してよい情報なのか。 |
| 問題らしい話を耳にした | 誰に確認・相談すべきか。放置してよい内容なのか。 |
| 「業界のためになるから進めよう」という話になった | 法令、定款、内部ルールや必要な手続の面でも問題がないか。 |
| これまでやったことのない事業を始める | 法人の目的・事業の範囲に入っているか。誰が決定すべき事項なのか。 |
| 判断に迷っている | 一人で判断せず、代表理事、他の理事、監事、事務局、必要に応じて専門家に確認できないか。 |
19.もう少し詳しく知りたい方へ
一般社団法人の制度について、もう少し詳しく知りたい場合には、まず法務省の説明を確認することをお勧めします。
法務省「一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A」
一般社団法人・一般財団法人の基本的な仕組みについて、Q&A形式で説明されています。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji153.html
法律そのものを読む前に、制度の概要を理解するための資料として参考になります。
e-Gov法令検索「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」
一般社団法人の設立、社員総会、理事、理事会、監事、計算などについて定める法律の全文を確認できます。
https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000048
法律のすべてを読む必要はありません。
理事として活動する中で疑問に思ったことについて、法務省のQ&Aや法人の定款・規則などを確認し、それでも分からない場合には、法人の事務局や専門家に確認するという使い方で十分です。
20.最後に
一般社団法人の活動は、理事だけで成り立つものではありません。
社員、会員、職員、事務局、協力者、そして法人の活動に関わる多くの方々によって支えられています。
理事には、その活動が法人の目的に沿っているか、社会や会員などから見て適切なものとなっているか、そして将来にわたって活動を続けていけるかという視点から法人を見る役割があります。
そして、業界団体などで理事を務める場合には、もう一つ大切にしていただきたいことがあります。
日常は、それぞれの企業・団体において責任ある立場で、自社・自組織の発展のために仕事をされています。
この法人の場に来たときには、その経験や知見を持ったまま、その一段上から業界全体を俯瞰してみてください。
自社の発展を考えることも大切です。
ほかの企業のことを考えることも大切です。
そして、業界全体がこれからどのように発展していくとよいのかを考えることも、この場だからこそできることです。
すべてを知っている必要も、いつも何かをしている必要もありません。
- 定款や会員規則に一度目を通しておくこと。
- 法人がどのような活動をしているのかを知っておくこと。
- 分からないことは確認すること。
- 異なる意見にも耳を傾けること。
- 自分や所属組織との利害関係があれば、それを伝えること。
- 自分だからできることがあるときには、少し力を貸すこと。
そして、ときには業界のために、ひと肌脱いでいただくこと。
そうした一人ひとりの異なる関わり方が、法人の活動を支え、業界全体の健全な発展につながっていきます。
初版:2026年9月1日
執筆:株式会社ENNA 代表取締役
編集・構成協力:ChatGPT
掲載:株式会社ENNA コラム