組織変革をバックアップする規程体系の在り方

はじめに

「社内規程は入社した時に見て以来、気にしたことが無い。」なんてありがちなフレーズが、経営者の望む組織変革を大きく妨げているという事実は意外と重要なポイントなのです。

本コラムは、平成22年(2010年)8月20日に、INSIGHT NOW!において執筆したものです。


本編

上場企業の規程体系整備を支援している中でいつも気になることは、この規程を社員のどれだけの方々が認識しているのだろうかということです。

本来、規程は事業継続に必要な様々な法令を受けて、社内の業務を管理していくために制定されるものですが、実際には、事業方針や事業計画を受けて組織や事業、業務プロセスが変更になっても、あまり見向きをされません。

しかし、事業計画が前年度から変更になるということは、すなわち社内での評価基準が変更になったということでもあります。

これは、社内での評価基準が変わっているわけですから、評価されるべき行動や規範を変更しなければならないということであり、それを明文化できるものは、社内規程に代表される社内文書(各種通達)や、経営陣から各部門に発信される文書ということになるはずです。

事業計画の修正を実行に移すための方策

では、会社の枠組みを定めている規程類が修正されていない状況で、各種通達がなされた場合、社員は即座に行動を変化させることができるのでしょうか。

一般的に考えれば、事業方針・事業計画が変更になった場合、成果基準や評価基準が変更になるわけですから、人事評価に反映されるべきものとなります。しかし、人事評価は長年の修正を経て完成しているものであり、単年度の事業計画によって即座に修正がされるものでもありません。

通常であれば、人事評価基準は2年~5年に1度変更されている程度のもので、どちらかというと普遍的な要素に若干の数値評価基準を組み合わせて作られていることが多いのです。

ということは、新興国を含めた経済環境の変化や、それらの国々に本拠地を置く競合企業の経営活動に対して、会社の変化・変容を後押しするための枠組みはどこにあるのかということを一度は考えておく必要があります。

規程はただのルールだけれども…

社内規程は、業務遂行上のただのルールブックです。

確かに、ただのルールブックではあるのですが、経営を強化していくために必要なものは、事業計画を作りこむことでも、方針を変えていくことでもなく、経営環境にあった会社組織に変化させていく社内のルール作りにあります。

よって社内業務で何をすべきで、何をすべきではないのかを明確に定めることができる社内規程を修正していく過程で、会社全体としての変化をコントロールしていく必要があります。

組織を変更し、フラット化し、人件費を圧縮し、業務を効率化するという行為を20年近く続けてきても、これまで経営陣が望むほどの社内の変化が生まれていないのであれば、それは社内の「商習慣」が支配する雰囲気の方が勝っていたということになります。

「組織はなかなか変われない」とは、組織変革を支援する方々の口からよく聞かれるフレーズではあるのですが、組織の枠組みを変えてしまえば、その枠組みに向かって勝手に変化していくものでもあります。

事業方針、事業戦略、事業計画、マネジメント・スタイル等々を変化させても、なかなか組織が変化しないと思うのであれば、次は社内のあるべき姿を定めている「規程体系」を見直すことで、新しい枠組みを作る他ありません。

自社に合った規程の重要性

社内規程なんて、どこかで売られている一般的な規程を持ってきて簡単に作っているから、そんなに大きな修正はしていないと伺うことは少なくありません。

では、一般的な規程とはどういったものなのでしょうか? 一般的な規程は誰が作成したものなのでしょうか? 考えるべきは、自分の会社の理想像を掲げたものが全社員に共有されていない状況で、どれだけ変化をさせたいと思っていたとしても、今までゆったりと過ごしていた環境から社員一人一人が自発的に変化してくということは、心理的にかなり困難な取り組みと言えます。

しかし、小さな会社が徐々に大きくなる過程で、どの会社でも社内規程を増やしてきているはずです。その会社自体の変化を規程という文書で管理してきたはずなのです。そして中には、100規程近い社内規程を抱えるようになった大手企業も少なくはありません。

これまで規程整備というと、小さな会社が大きくなっていく過程で、また会社法が改正され内部統制が強化される過程において必要に迫られて整備することが中心になっていたと思われます。

しかし、それは環境の変化に合わせて規程体系を整備できていたということでもあり、そういった意味においては、会社の事業方針や事業計画に合わせて組織を変化させるために、社内規程を有効活用するということができるとも考えられると思うのです。


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平成22年8月20日作成