日本人に危機感は不要なのか?

総務省統計局から2020年の日本の姿が統計予測という形で発表されています。15歳未満全人口の10%を割り込み、65歳以上が30%を超える可能性があるとしています。平均余命が85歳と考えると定年退職から20年~25年は生活していく世界が待っています。

最近は、WEBも雑誌もサムスン・ブームになっているようです。
好業績の要因を経営者の危機意識、社員のエリート志向、海外展開の事業戦略などの様々な分析と批判が繰り返されていますが、日本企業が真似るには、経営環境が違いすぎると考えられるため、本当に参考になるのかは甚だ疑問です。

◆ 会社員も政治家も一緒じゃないですか?

新卒の就職支援や、40歳以上の再就職支援を行っていると強く感じることですが、例えば、学生が大手企業や就職ランキング上位企業を目指し、就職したら国内最高の仕事をしたい、海外に出ていきたいなどといろいろと夢を持ちながら就職活動をしているわけですが、入社した段階でその会社の枠組みの中に収まってしまいます。

再就職支援でも、会社という枠組みの中では最高の仕事をしてきたのかもしれませんが、ビジネスパーソンとして汎用性のあるセンスやスキルを磨いてきたと胸を張って言える人達が多いかというと、そうでもありません。

社団法人東京都専修学校各種学校協会が提供する「適職塾」においてもハローワークで申込みをして頂くのですが、実際には、ハローワークの窓口において「WEB開発などのスキルが大切です」といった説明を受けて、人材が飽和している[b]「保有資格で就活を行う」という茨の道[/b]に案内されて、職業訓練までもが将来性を狭める結果になってしまっているのが現状です。

これらの状況から見えてくるものは、高校入試、大学入試、就職活動、公務員試験、選挙活動に共通する[b]「受かったもの勝ち」[/b]神話の怖さだと思います。

選挙が終わった後に、当選した議員さんたちは決まって「ありがとうございます」と言うのですが、本当は「よろしくお願いします」のはずなのです。

この「現状満足」的な違和感は、日本のあらゆる局面に根深くはびこっている[b]「日本人を成長させない戦略」[/b]ではないのかと思ってしまいます。

◆ 10年後を想定して、今の状況を考えてみると

さて、TVニュース等を観ていても、欧米の政治家や企業経営者は40代が中心だとか、中国共産党も70代、80代の幹部が大勢いたけれども今では40代、50代が中心になって若返っているという話しもありまして。

日本はといえば、まだまだ60代、70代の方々が活躍している経済社会構造になっていますが、これを日本の経済不況の原因として考えてよいものなのでしょうか。

2010年と2020年の日本人口の年齢構成を比較すると以下になります。
参照)http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2009np/index.htm

2010年 15歳未満:13.3%、15歳~65歳未満:63.9%、65歳以上:22.8%
2020年 15歳未満:10.8%、15歳~65歳未満:60.0%、65歳以上:29.2%

この比較を見る限り、10年後までに、今年生まれた赤ちゃんが小学校5年生になるまでの間に、2000年問題が叫ばれてから今までの間に、サザンオールスターズの「TSUNAMI」がヒットしてから今までの間に起こる変化ということになっています。

単純に考えれば、これからの日本社会は「ゆとり教育」で育てられた子供たちが全入学時代となり大学教育まではたどり着けるようになったにも関わらず、業績好調な大手企業は生き残りのために海外採用を拡大していくというミスマッチが続くことになります。

◆ 日本の人口構成の変化とその変化への対応

話題のサムスンの躍進ですが、外部環境が全く異なるサムスンと日本企業では、正直参考にはならないと思われるのです。

それは、為替(円高・ウォン安)、税制(法人税率)、国民性(エリート志向が強く敗者復活がない世界)、国による保護政策(政界との連携)等々を含む経営基盤がそもそも異なりますので、単純な比較はできないと考えられます。

しかし、ここで考えておきたいことは、これからの10年間において日本人口の年齢構成が大きく変化することは明確で、中国の賃上げの問題や通貨切り上げなどが起これば、生産拠点の変更や消費地域の選定が見直されることになります。

これは、日本企業は日本国内だけを市場にしていては、大企業に限らず中小企業でも生き残れないかもしれないということを表しているのかもしれません。

中小企業においても、大手企業の下請けだから国内展開だけを考えれば安泰ということは考えにくく、日本がマーケットとして有望で在り続けなければ、日本企業自身が日本国内での採用を減らし続けるようになり、労働人口の減少という観点からも経済的なパイが縮小していくことになります。

結果として、個々人がたった10年間という間に、様々な変化に対応していかなければならないということになるでしょう。

◆ 日本経済は「老害」のために発展しないのか?

様々なWEBや雑誌では、政治においても経済においても「若返り」が重要なキーワードになるかのように書かれています。

日本経済においては、大手企業の取締役になる年齢が60歳近いこともあって、酷いものでは「老害」などという言葉も散見されます。

単純に考えれば、欧米や中国、韓国の定年年齢が、日本経済における取締役就任年齢になっているような状況です。その差は最大20歳程度で、時代背景が20年もずれているということになります。

60歳と40歳の差であれば、企業によっては小さな差かもしれませんが、40歳と20歳の差と考えると、生きている世界が違いすぎます。

一般的な日本人であれば、そういう時代だから「日本企業の大手企業」に入社するようにしようと考えるかもしれません。

しかし、世界経済の変化への対応を「時間が過ぎるの待つ」というスタンスにならずに受容し、改革していくことしか生き残る術はないと思われるのです。

では、勤務されている会社は、この10年間の変化にどのように対応しようと考えているかをご存知ですか。そして、柔軟性を持って危機に対面できる年代は、どの年代だと考えられるでしょうか。

決して、40代だから良いとか、60代だからダメといったことはないと思うのです。危機を危機として真正面に捉えて、本気で乗り越えようとできる人材がいるかどうかにかかっていると思います。

◆ 10年後はどこで働いているのでしょうか

今年の年初には、中国経済で市場を広げて業績を回復するといった発言が多く聞かれました。しかし法制度や商習慣の異なる国で展開するということは並大抵の努力では成就しませんし、中国への進出にしても沿岸地域が中心で、今後発展が見込まれる内陸部への展開までを想定しているケースは決して多くはありません。

また海外の展開を考えるにしても、本当に中国だけを考えればよいのか、インドやブラジル、アフリカ諸国なども含めて展開する大手企業に対抗、追従することも考える必要がないのかどうかを判断する必要があると思われます。

ちなみに中小企業の経営者の方々とお話ししていると、海外に進出したところで、業績が拡大することは相当難しいと伺います。しかし海外の企業は円高の今でさえ、日本の良い製品、サービスまたは日本という市場を目指して日々進出しているわけです。

実際のところ高級品やIT業界で一部日本からの撤退などが報道されていても、中国などへの事業強化が目的であって、日本での事業を閉鎖することを目的としているわけではなく、選択と集中の結果でしかありませんので、一般的な報道等で言われる外国諸国から見向きもされなくなっても国内市場があれば大丈夫的な風潮は、あまり意味がないとも思われます。

では、10年後に向けて、海外マーケットに大きく舵を切り始めた大手企業に対して、日本の雇用の多くを守っている中小企業はどのような経営判断をすべきなのでしょうか。

組織変革などというゆっくりした変化も大切ですが、事業変革というドラスティックな変化も可能となる組織づくりを目指す時期に来ていると考えてよいと思います。

ちなみに太陽光発電設備の製造メーカーでシャープを抜いて世界3位になっているサンテックパワー社は中国企業ですが、1999年までは日本の企業でした。そういう意味では、海外を志向することで競争できる企業はまだまだ日本にあると考えられるのです。

2010年6月14日脱稿